コンボデッキに明日はあるか
2018年8月16日 Magic: The Gathering晴れる屋にグリコンの調整記が載っていました
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/5303
プロの調整能力はすごいなぁと思ったのと、「フェアデッキの王」というワードから一つ疑問が浮かんだので考えてみます。
その疑問は、「レガシーをフェアVSコンボの構図で見た時に、どういった推移をするか」というものです。
ここで考えるのはせいぜい数か月のスパンではなく、今後長期間にわたってどういった傾向がでるのかという点です。
あるデッキが強化されたり、弱体化されたりというのはメタゲームの影響を受けるものです。したがって、メタゲームを想定したうえで強化/弱化を考えるのが妥当ですが、それが簡単に出来たら苦労しません。
そこで、今回は「デッキが単純に強化/弱化されるか」という点をコンボ/フェアについてみていきます。
「単純に強化/弱化されるか」というのは、例えばANTからギタクシア派の調査が禁止されて「メタゲーム上の立ち位置」はともかく、「デッキが遂行しようとしているプランを達成しにくくなった」という点は明確です。
あるいは、死儀礼のシャーマンが解禁された場合を考えてもいいかもしれません。死儀礼のシャーマンは対コンボという部分はありますが、フェアデッキの行いたいことを強烈に後押ししてくれます。
デッキが強化される要因は「禁止カードの解禁」と「新カードの追加」です。
(例えば、カードの再録によって使用者が増える場合も考えられますが、ここでは先に挙げた通り、「単純な強化/弱化」を考えます)。
そして、弱化される要因は「カードの禁止指定」です。
(もう少し言えば「メタカードの追加」も要因として挙げられますが、これはメタゲームの影響を多大に受ける枠なので、今回は除外します)
順にみていきましょう。
・禁止カードの解禁による強化
さて、レガシーで最近解禁されたカード群を見てみましょう
2015/10 黒の万力
2015/01 世界くらいのドラゴン
2012/06 土地税
まずわかることですが、そもそも禁止カードの解禁自体がほとんどありません。
なので、禁止カードの解禁についてデッキが強化されるというのはほとんどないと考えられるでしょう。これは、フェアデッキ/コンボデッキを問いません。
・新カードの追加
新カードの追加は以下の2点です
1:スタンダードに追加されるエキスパンション
2:サプリメント商品による追加
さて、これら2点で追加されるカード群の特徴を見てみましょう。
・スタンダードに追加されるエキスパンション
これは、3か月に1度あるカードの追加ですね。
ここ1年ぐらいのカード群でレガシーに影響を与えたカードを見てみましょう
(採用率はともかく、少なからず試されたカードも含みます。まだ登場して1年未満のカードばかりなので、ガバガバピックアップは許してください)
---基本セット2019---
悔恨する僧侶→デスタクで墓地対策
霧の呼び手→マーフォークで
練達飛行機械職人、サイ→アーティファクトデッキ、ボンバーマンとか
高山の月→使われてるんですかね・・・?
ゴブリンの損壊名手→ゴブリンデッキで
安全の護符→対ANTにと言われてるけど、見たことないですね
疎外→全然みません。
---ドミナリア---
ベナリア史→強いっていわれたけど、それほど・・・
アンティキティー戦争→アーティファクト系デッキでよく見ます
前知の場→2回ほどみました。書いてることが強い点には同意
ドミナリアの英雄、テフェリー→強すぎてびっくりした。プレリfoilをわざわざSCGから取り寄せるぐらいには気に入ってる。
減衰球→よくサイドボードで見ますね
ウルザの後継、カーン→こいつどのフォーマットにもいるな
---イクサランの相克---
執着的探訪→強いと思いましたよ。見た時は
血染めの太陽→プレビュー時は話題になりましたね。プレビュー時は
凶兆艦隊の向こう見ず→一部デッキでつかわれているらしい。僕は出会ったことありません。
狂信的扇動者→ゴブリンデッキで使われることがまれにあるそうですよ
沈黙の墓石→ANTのサイドボードに検討されました
---イクサラン---
航路の作成→URデルバーとかで見ました
巧射艦隊の追跡者→死儀礼の後釜になれましたか?
形成師の聖域→ほぼ見ない・・・
アズカンタの探索→奇跡とかで使われましたね
宝物の地図→一部のデッキで使われているらしい
魔術遠眼鏡→チャリスに引っかからないのでエルドラージとかでよく見ます
ざっくりと、こんなところでしょうか。
現状あるフェアデッキを強化するカードや、サイドボード向けカードが目立つ中、コンボデッキの単純な強化カードは最近頭角を現してきたサルヴェイジャーコンボを強化するサイやアンティキティー戦争ぐらいしかないのに対し、
カーンやテフェリーなどのプレインズウォーカーから、魔術遠眼鏡、減衰球などのフェアデッキ向けサイドボードカードまで、フェアデッキは非常に多くのカードを獲得しています。
このような「フェアデッキ優遇」の傾向は、スタンダード環境に強力すぎるコンボデッキが蔓延しないようにWotCがしているのが要因です。
スタンダード環境で強力なコンボデッキが台頭すると、スタンダード環境に意思の力のような強力な対策カードがないことも相まって制御不能になるから当然だと思います。
最近のスタンダードの禁止で守護フェリダーや霊気池の脅威を素早く規制した点からもWotCがコンボに強い警戒心を持っていることがわかります。
一時期「ミッドレンジですぞ」などと揶揄されていましたが、今後もWotCがスタンダード環境でコンボを抑えてフェアデッキを優遇するようなスタンスを取り続ける以上は「スタンダードの新エキスパンションのカードがレガシー環境に与える影響は、フェアデッキ有利」という傾向は続くでしょう。
----蛇足----
もう少し見てみると、コンボデッキ全般が利益を得るカードは
・軽量ドローカード
・軽量の妨害
の2点ですが、後者はともかく前者はほとんど刷られる見込みがないのでこの点でもコンボ側が不利です
----蛇足終わり----
・サプリメント商品による追加
サプリメント商品は「統率者2018」「バトルボンド」といった商品群で、これらからも新カードは望めますし、「スタンダードとモダンに影響を与えない」という理由でそこそこ強力なカードも新録されます。
サプリメント商品出身のカードと言えば「真の名の宿敵」や「レオヴォルド」なんかが有名ですね。
サプリメント商品は、今後も様々なものが出るかとは思いますが、現状「今後も続いていくことが予想されるシリーズ」は「統率者セット」ぐらいです
(〇〇マスターズは再録ばかりなので、今回の議論の対象外です。まぁ、マスターズ商法はもうやめるみたいですけど)
統率者セットは、その特徴から主に「伝説のクリーチャー」「伝説のプレインズウォーカー」が新録カードとなりやすいです。
また、統率者セットは開封時の状態で友達と遊んでいることを想定している点からも、どちらかというと「数ターンで相手を倒すコンボ」は避けているように見受けられます。
もちろん、無限コンボを含んでいないというわけではないですが、商品の特性上、どうしてもクリーチャーやプレインズウォーカーが新録の中心となりがちで、
強力なドローソースなどを希求するコンボデッキを強化するカードはなかなか出てこないのが現状です。
では、次に弱体化される原因を見ていきましょう。
レガシーでは当然スタン落ちがないので、単純に環境からカードが消える要因は禁止カードに指定されることです。
昨今の禁止カードを見てみましょう
2018/07 死儀礼のシャーマン、ギタクシア派の調査
2017/04 師範の占い独楽
2015/10 時を超えた探索
2015/01 宝船の巡航
2011/10 精神的つまずき
これらも、数が少ないうえに、傾向を見るのは難しいですが、
フェアデッキに不利な禁止:死儀礼のシャーマン、師範の占い独楽
コンボデッキに不利な禁止:ギタクシア派の調査、時を超えた探索
といったところでしょうか(宝船の巡航と精神的つまずきはやらかし案件なので・・・)
ぱっと見た感じでは、あまり傾向はないですが暴れすぎると禁止になるという点ぐらいですね。
と、いうことで、まとめましょう。
1:レガシー環境のカードプールの変化要因は「スタンダードのエキスパンション」「サプリメント商品」「禁止解除」「禁止指定」の4通りがある
2:「スタンダードのエキスパンション」「サプリメント商品」は、その製品の特性上「フェアデッキ有利」な新規カードが追加されやすい
3:「禁止解除」「禁止指定」はサンプル数が少なくて、何とも言えない
これらの点から、今後もカードプールの拡大とともに、「フェアデッキはますます強くなり」「コンボデッキはあまり強化されない」という状態が続くかと思われます。
そのため、時間がたてばたつほど環境からコンボデッキが駆逐されていくのではないか
というのが僕の予想です。
おわり
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/5303
プロの調整能力はすごいなぁと思ったのと、「フェアデッキの王」というワードから一つ疑問が浮かんだので考えてみます。
その疑問は、「レガシーをフェアVSコンボの構図で見た時に、どういった推移をするか」というものです。
ここで考えるのはせいぜい数か月のスパンではなく、今後長期間にわたってどういった傾向がでるのかという点です。
あるデッキが強化されたり、弱体化されたりというのはメタゲームの影響を受けるものです。したがって、メタゲームを想定したうえで強化/弱化を考えるのが妥当ですが、それが簡単に出来たら苦労しません。
そこで、今回は「デッキが単純に強化/弱化されるか」という点をコンボ/フェアについてみていきます。
「単純に強化/弱化されるか」というのは、例えばANTからギタクシア派の調査が禁止されて「メタゲーム上の立ち位置」はともかく、「デッキが遂行しようとしているプランを達成しにくくなった」という点は明確です。
あるいは、死儀礼のシャーマンが解禁された場合を考えてもいいかもしれません。死儀礼のシャーマンは対コンボという部分はありますが、フェアデッキの行いたいことを強烈に後押ししてくれます。
デッキが強化される要因は「禁止カードの解禁」と「新カードの追加」です。
(例えば、カードの再録によって使用者が増える場合も考えられますが、ここでは先に挙げた通り、「単純な強化/弱化」を考えます)。
そして、弱化される要因は「カードの禁止指定」です。
(もう少し言えば「メタカードの追加」も要因として挙げられますが、これはメタゲームの影響を多大に受ける枠なので、今回は除外します)
順にみていきましょう。
・禁止カードの解禁による強化
さて、レガシーで最近解禁されたカード群を見てみましょう
2015/10 黒の万力
2015/01 世界くらいのドラゴン
2012/06 土地税
まずわかることですが、そもそも禁止カードの解禁自体がほとんどありません。
なので、禁止カードの解禁についてデッキが強化されるというのはほとんどないと考えられるでしょう。これは、フェアデッキ/コンボデッキを問いません。
・新カードの追加
新カードの追加は以下の2点です
1:スタンダードに追加されるエキスパンション
2:サプリメント商品による追加
さて、これら2点で追加されるカード群の特徴を見てみましょう。
・スタンダードに追加されるエキスパンション
これは、3か月に1度あるカードの追加ですね。
ここ1年ぐらいのカード群でレガシーに影響を与えたカードを見てみましょう
(採用率はともかく、少なからず試されたカードも含みます。まだ登場して1年未満のカードばかりなので、ガバガバピックアップは許してください)
---基本セット2019---
悔恨する僧侶→デスタクで墓地対策
霧の呼び手→マーフォークで
練達飛行機械職人、サイ→アーティファクトデッキ、ボンバーマンとか
高山の月→使われてるんですかね・・・?
ゴブリンの損壊名手→ゴブリンデッキで
安全の護符→対ANTにと言われてるけど、見たことないですね
疎外→全然みません。
---ドミナリア---
ベナリア史→強いっていわれたけど、それほど・・・
アンティキティー戦争→アーティファクト系デッキでよく見ます
前知の場→2回ほどみました。書いてることが強い点には同意
ドミナリアの英雄、テフェリー→強すぎてびっくりした。プレリfoilをわざわざSCGから取り寄せるぐらいには気に入ってる。
減衰球→よくサイドボードで見ますね
ウルザの後継、カーン→こいつどのフォーマットにもいるな
---イクサランの相克---
執着的探訪→強いと思いましたよ。見た時は
血染めの太陽→プレビュー時は話題になりましたね。プレビュー時は
凶兆艦隊の向こう見ず→一部デッキでつかわれているらしい。僕は出会ったことありません。
狂信的扇動者→ゴブリンデッキで使われることがまれにあるそうですよ
沈黙の墓石→ANTのサイドボードに検討されました
---イクサラン---
航路の作成→URデルバーとかで見ました
巧射艦隊の追跡者→死儀礼の後釜になれましたか?
形成師の聖域→ほぼ見ない・・・
アズカンタの探索→奇跡とかで使われましたね
宝物の地図→一部のデッキで使われているらしい
魔術遠眼鏡→チャリスに引っかからないのでエルドラージとかでよく見ます
ざっくりと、こんなところでしょうか。
現状あるフェアデッキを強化するカードや、サイドボード向けカードが目立つ中、コンボデッキの単純な強化カードは最近頭角を現してきたサルヴェイジャーコンボを強化するサイやアンティキティー戦争ぐらいしかないのに対し、
カーンやテフェリーなどのプレインズウォーカーから、魔術遠眼鏡、減衰球などのフェアデッキ向けサイドボードカードまで、フェアデッキは非常に多くのカードを獲得しています。
このような「フェアデッキ優遇」の傾向は、スタンダード環境に強力すぎるコンボデッキが蔓延しないようにWotCがしているのが要因です。
スタンダード環境で強力なコンボデッキが台頭すると、スタンダード環境に意思の力のような強力な対策カードがないことも相まって制御不能になるから当然だと思います。
最近のスタンダードの禁止で守護フェリダーや霊気池の脅威を素早く規制した点からもWotCがコンボに強い警戒心を持っていることがわかります。
一時期「ミッドレンジですぞ」などと揶揄されていましたが、今後もWotCがスタンダード環境でコンボを抑えてフェアデッキを優遇するようなスタンスを取り続ける以上は「スタンダードの新エキスパンションのカードがレガシー環境に与える影響は、フェアデッキ有利」という傾向は続くでしょう。
----蛇足----
もう少し見てみると、コンボデッキ全般が利益を得るカードは
・軽量ドローカード
・軽量の妨害
の2点ですが、後者はともかく前者はほとんど刷られる見込みがないのでこの点でもコンボ側が不利です
----蛇足終わり----
・サプリメント商品による追加
サプリメント商品は「統率者2018」「バトルボンド」といった商品群で、これらからも新カードは望めますし、「スタンダードとモダンに影響を与えない」という理由でそこそこ強力なカードも新録されます。
サプリメント商品出身のカードと言えば「真の名の宿敵」や「レオヴォルド」なんかが有名ですね。
サプリメント商品は、今後も様々なものが出るかとは思いますが、現状「今後も続いていくことが予想されるシリーズ」は「統率者セット」ぐらいです
(〇〇マスターズは再録ばかりなので、今回の議論の対象外です。まぁ、マスターズ商法はもうやめるみたいですけど)
統率者セットは、その特徴から主に「伝説のクリーチャー」「伝説のプレインズウォーカー」が新録カードとなりやすいです。
また、統率者セットは開封時の状態で友達と遊んでいることを想定している点からも、どちらかというと「数ターンで相手を倒すコンボ」は避けているように見受けられます。
もちろん、無限コンボを含んでいないというわけではないですが、商品の特性上、どうしてもクリーチャーやプレインズウォーカーが新録の中心となりがちで、
強力なドローソースなどを希求するコンボデッキを強化するカードはなかなか出てこないのが現状です。
では、次に弱体化される原因を見ていきましょう。
レガシーでは当然スタン落ちがないので、単純に環境からカードが消える要因は禁止カードに指定されることです。
昨今の禁止カードを見てみましょう
2018/07 死儀礼のシャーマン、ギタクシア派の調査
2017/04 師範の占い独楽
2015/10 時を超えた探索
2015/01 宝船の巡航
2011/10 精神的つまずき
これらも、数が少ないうえに、傾向を見るのは難しいですが、
フェアデッキに不利な禁止:死儀礼のシャーマン、師範の占い独楽
コンボデッキに不利な禁止:ギタクシア派の調査、時を超えた探索
といったところでしょうか(宝船の巡航と精神的つまずきはやらかし案件なので・・・)
ぱっと見た感じでは、あまり傾向はないですが暴れすぎると禁止になるという点ぐらいですね。
と、いうことで、まとめましょう。
1:レガシー環境のカードプールの変化要因は「スタンダードのエキスパンション」「サプリメント商品」「禁止解除」「禁止指定」の4通りがある
2:「スタンダードのエキスパンション」「サプリメント商品」は、その製品の特性上「フェアデッキ有利」な新規カードが追加されやすい
3:「禁止解除」「禁止指定」はサンプル数が少なくて、何とも言えない
これらの点から、今後もカードプールの拡大とともに、「フェアデッキはますます強くなり」「コンボデッキはあまり強化されない」という状態が続くかと思われます。
そのため、時間がたてばたつほど環境からコンボデッキが駆逐されていくのではないか
というのが僕の予想です。
おわり
コメント